発達障害傾向ですが、「営業」できました。

毎日ひとにキレられていた私が、「人間」らしいコミュニケーションを身に着け、「営業職」として働けるようになるまでの話と、試行錯誤の記録。

問題と対策6)表情が作れない~ロボット的人間でした~

先日は雑談ができない問題について書きましたが、今回はそれに続き「表情が作れない」問題についてお話しようと思います。
 

■無表情な人間

表情は要らない、という思い込み

・表情が作れなかった理由

私は長い間、「無表情」な人間でした。同意や感謝などの感情を、顔で表現できなかったのです。

 

理由は、2つあります。まず、どういうタイミングでどういう表情を作ればいいか、分からなかったからです。
 
子供の頃から、周囲には表情豊かな人が多かったにも関わらず、彼らの表情を模倣し、身に着けることができませんでした。
 
これは、未だに理由が分かりません。大多数の人は、これが自然とできるそうで、すごい能力だと思います。
 

・表情って必要なの?

もう一つは、表情の必要性を感じなかったことです。

 
雑談がテーマの回で、「雑談をしなくていいと思っていた」と書きましたが、同じように表情も作らなくていいと思っていました
 
むしろ、表情は単なるポーズで、コミュニケーションの本質とは関係がないとさえ考えていました。
 
何故なら、人間同士のコミュニケーションは「相手と自分の立場」と「発言の意味のやり取り」だけで成立する、と信じていたからです。
 
 

立場と発言さえ適切なら動いてくれる(?)

・八百屋で例えてみる

例えば、八百屋でリンゴを買うとします。
 
私が「リンゴを下さい(無表情)」と言えば「分かりました」と言われ、何の問題もなくリンゴが手に入ります。
 
ここまでは、特に問題ありません。
 
ところが、もし買ってから気が変わり、ミカンが欲しくなったらどうでしょうか?
  

・感情は無関係、という誤解

 普通、前言を撤回すると、相手は嫌な顔をするし、こちらも気を遣うものです。
 
ところが私は、「やっぱりミカンに変えてください(無表情)」と言いさえすれば、すんなり要求が通ると考えていました。
 
また再度気が変わっても、顔色一つ変えず対応してくれるとすら、思っていました。
 
つまり、
 
「相手は売り手だから、個人的な感情抜きで買い手の意向に応じるものだ」
発言の内容さえ明確なら、相手は立場の範囲でそれに応じるものだ
 
と考えていたのです。
 

・エクセルを使うイメージ

これはちょうど、「エクセルで正しい計算式を組めば、ほしい数字が返ってくる」というイメージです。

 

自分がユーザー、相手がエクセルです。

 

エクセルなら、何度計算式を訂正しても、相手(エクセル)が「ちょっと、いい加減にしてよ!もう"SUM(A1:C10)"でいいじゃん!」などと臍を曲げたりはしません。

 

それどころか、何時間でも、何十時間でも、相手は付き合ってくれます。

 

・人間はエクセルではない

しかし、当然ながら、人間はエクセルではありません。

 

人間には感情があり、自分を尊重されたいという欲望を持っています。それが傷つけられると、当然ながら反発してきます。

 

下記記事でも書きましたが、誰かに何かを依頼するにも、こうした「尊重の気持ち」を示さないと、上手くいかないのです。

 

katiefue.hatenablog.com

 

 

ようやく表情の必要性に気付く

・無理なお願い

この必要性に気付かされたのが、ある先輩とのやりとりでした。

 

彼は、商品調達部署の担当者でした。

 

ある時、私は先輩に商品の手配を依頼しました。翌日中に入手が必要でしたが、入手ルートが込み入っており、彼の協力が必要でした。

 

その際、こういったメールを書きました。

 

XX様

 

お疲れ様です。

下記商品の手配をお願いいたします。

 

・商品名

・数量

・期限(明日)

・期限の理由

 

1時間以内にご連絡ください。 

宜しくお願いいたします。

 

・立場や内容だけでは、人は動かない

ところが、いくら待っても連絡がありません。その方はメールの返信が速いと評判だったため、おかしいと思いました。

 

すると、上司が「ちょっといい?」と話しかけてこられました。

 

「XX君が、あなたの依頼には対応できないと言ってきた。

"無理な要求をメールで送り付けて、自分には挨拶もないから"だそうだ。

こういう時は、申し訳ないという顔で、頭を下げてお願いしたほうがいい。*1

 

つまり、「依頼する側」「対応する側」という立場や、「明確な依頼内容」だけでは相手は動いてくれない。それ相応の表情や身振りが必要だ、というのです。

 

この言葉は、私にとっては衝撃的でした。

 

と同時に、思い返せば同様のトラブルが以前にもありました。そのため、場面に応じた表情を身に着けねば、と考えるようになりました。

 

 

■表情を身に着ける

お手本は先輩

・気遣い上手な人

そこで、お手本にしたのは、オフィスでも特に人望の篤い女性の先輩でした。

 

その方は、様々な方から「気遣い上手」と言われ、相手を決して嫌な気分にさせない、優れたスキルをお持ちでした。

 

運よく頻繁に接する機会があったので、彼女の言動を観察することにしました。

 

・「1発言+1表情」の法則

すると、大発見がありました。

 

彼女は、一つの発言に、一つの表情をセットにしていたのです。

 

例えば、こういった何気ない会話です:

 

先輩:お疲れ様です。先日の出張は、いかがでしたか?(+笑顔)

相手:いや~、雪で大変でしたよ

先輩:え~、そうなんですか!大変ですね~(+気の毒そうな顔)

相手:そうなんですよ、本当に困りました

先輩:まだ寒いので、風邪ひかないようにしてくださいね(+笑顔)

相手:ありがとうございます!

 

もう、プロとしか言いようがありませんね。見事です。

 

このコンボ技が自然にキマると、相手が「本気で気遣ってもらえた」と嬉しくなります(逆に不自然だと、嫌味っぽくなりますが)

 

これを発見したとき、「なぜこれを小学校で教えてくれなかったんだ...!」と、本気で思いました。

 

国語、算数、理科、社会に加え、「表情学」も必須にしてほしいくらいです。私は「1」しか取れない自信ならあります

 

 

司馬さんの本にも載ってました

因みに、切り口はやや違いますが、本ブログでおなじみの司馬理英子さんの本にも、表情の大切さが書かれています。

 該当箇所:p.92-93「あいさつができない、コミュニケーションがとれない」

※挨拶するときに「ニコッと笑う」ことで、好印象になる、とあります。

 

会話がうまくできなくても、あいさつができれば、まわりの人から受け入れてもらいやすいものです。

という書き出しから始まる本項は、具体的にどう挨拶すればいいかも書かれており、分かりやすく実践に適しています。

 

何度も紹介させて頂いていますが、アドバイスも当事者目線で、勉強になります。

 

 

表情スキルが身について、思ったこと

・1年くらいでなんとか習得

先輩の表情を真似て、ぎこちないながら「1発言+1表情」を実践し始めて1年後。

 

最初は、顔のどこをどう動かせば自然になるかわからず、初期のアンドロイドロボットみたいになっていましたが、それなりにサマになってきました。

 

もう最近では、「コミュニケーションが苦手です」と言っても、笑って流されるくらいです。本当に、このスキルが身についてよかったです。

 

・結構ケガもしました

因みに、このかん、不自然な表情が却って不興を買ったり、「気持ち悪いんだよ!」と罵倒されたりと、散々な目に遭いました(罵倒する方もする方ですが)

 

今回テーマにした表情だけでなく、ソーシャルスキルの試行錯誤の過程では、こんな風に「ケガ」することも多かったです。

 

人間らしい振る舞い*2ができない人に対しては、人間は容赦ないんだな、とつくづく実感しました。

 

とはいえ、自分自身が同じタイプの人に対し、違和感を感じずにいられるかというと、まだそのレベルには至っていません。

 

その辺は、今後の自分の修行テーマです。 

 

・人間社会の大変さを感じる

余談ですが、もしAIが進歩してオフィスがAIだらけになったら、表情などなくてもみな快く働いてくれるのかも知れません。

 

そう思うと、生まれてくるのが100年ほど早かったのかも、と思います。

 

逆にそこまでいくと、私を含め人間自体、仕事現場から淘汰される可能性もあったりして。

 

人間の社会は、配慮しなければいけないことが多すぎて、大変ですね。

 

以上、表情が作れない問題について、でした。

 

 

*1:このようにかみ砕いて説明して下さったのは、当時の上司が発達障害についてある程度知識があったからだと思います。この時以外にも、まだ自分の特性を理解し切れていなかった私に、それとなく詳しいアドバイスを下さいました。感謝しています。

*2:むしろ、「人間が人間に求めている振る舞い」と言ったほうが適切かも知れませんが。相手の行動が気に食わず、非理性的な対応をする、ということこそ、かなり「人間的」と言える気もします。この辺は、専門的に分析した本があれば、是非読みたいですね。