発達障害傾向ですが、「営業」できました。

毎日ひとにキレられていた私が、「人間」らしいコミュニケーションを身に着け、「営業職」として働けるようになるまでの話と、試行錯誤の記録。

摂食障害の記録(5)拒食症時の「こだわり」まとめ(後編)

今回は、前回(4/11記事)の続きとして、拒食症だった当時の「こだわり」について書きたいと思います。

 

私自身、自分のおかしな行動に翻弄ほんろうされてはいましたが、それを見守る周囲の人達のことも、相当振り回してしまいました。

 

今となっては申し訳なく思うばかりですが、こういった特殊な「こだわり」について、当事者が詳しく書くことで、誰かの助けになるかも知れない。そう思い、書き始めました。

 

こだわりとは一体どんな内容だったのか?その時の気持ちはどんなものだったのか?続きを書いていきます。

 

 

異様なこだわり(後編)

おさらい

まず、前回挙げた私の「こだわり」を再度リストアップしてみます。

  • 食べ物は必ず「はかり」で計量
  • 0カロリー食品ばかり食べる
  • 常にカロリー計算ブックを持ち歩く
  • 油、砂糖、肉に拒否反応
  • 料理の本ばかり読む
  • 異様にせっかちになった 
  • 太ももの隙間をやけに気にする

ざっと見ただけでも、「痩せたい」という気持ちに執着していたことが分かりますね。 

 

では今回は、4つ目から詳しく書いていきます。

 

油、砂糖、肉に拒否反応

・料理に使わないで!

前の記事に書いたように、私はできるだけ摂取カロリーを抑えようとしていました。そのため、しぜんと食べられないものが出てきました。

 

それは、「油」「砂糖」そして「肉」です。これらが、見るのも食べるのも嫌になったのです。

 

それは何故かというと、非常に単純ですが「高カロリーだから」*1です。

 

母の手料理が食べられるようになってからも、この3点を口にするのは嫌で嫌で仕方ありませんでした。

 

お椀に浮いた油の玉や、料理から出た汁がキラキラ光っていても「これ油使ったでしょ!」と激怒していたくらい、神経質になっていたのです。

 

・実際には結構使われていた

が、どんな料理にも、これら3種は必需品。実際に毎日料理していると分かりますが、これらがないと、作れる料理がかなり制限されるのです。

 

具体的には、肉を入れないと栄養が偏るし、油がないと焦げ付くし、砂糖がないと「うま味」が出しにくくなってしまいます。

 

そんなわけで、本人は「使ってないよ」と言いつつ、実際には私の見ていないところでかなり使っていたようです

 

何故なら、よく「きんぴらごぼう」や「筑前煮」を作ってくれたのですが、味がそれなりに甘かったからです(肉はよけていたので、食べませんでした汗)。ただ、お陰で摂取カロリーが確保できていたわけですから、感謝しかありません。 

 

料理の本ばかり読む

・恍惚感に浸る

また、奇妙なことに、「料理の本」が読みたくて仕方なくなるという変なこだわりも出てきました。

 

雑誌の料理コーナーや、レシピ本など、おいしそうな料理の写真が載った本をむさぼるように読むようになったのです。

 

「穴があくほど見る」という表現がありますが、まさにそれです。

 

その時の感覚はどんなものだったかと言うと、例えば高級ファッション誌の100万円のドレスを見てため息をつくような、そんな憧れ恍惚感こうこつかんに近いものでした。

 

・食べちゃダメ、でも食べたい

当時は、なぜ自分がそんなことをしたいのか、自分でもよく理解できませんでした。

 

しかし、いま思うと、恐らく抑圧されていた「食への渇望」が、おもてに現れていたのだと思います。

 

当時は飢餓状態が続き、体は栄養を欲していました。にも関わらず、心は「食べてはダメ」と食欲を否定していました。肉の焼けるいい匂いが鼻腔びこうをくすぐるたび、「これは毒だ」と自分に言い聞かせていたほどです。

 

しかし、いくら精神が抵抗しても、食欲というのは非常に強い本能。完璧に抑え込むのは、難しかったのだと思います。

 

そんなわけで、「食べたくないくせに、料理本は食い入るように眺める」という矛盾した行動は、かなり長い間続くことになりました。

 

とにかくせっかちになった

・何でも「今すぐ」

また、非常にせっかちになったのも、大きな変化でした。

 

食事や入浴、買い物など、なんでも「今すぐしたい・終わらせたい」と強く思うようになりました。

 

例えば、母の手料理が食べられるようになってからは、料理を作るあいだ母のうしろにずっと立っていたり。また入浴も、「早く上がらなきゃ勉強時間がない」と焦り、冬でもシャワーで済ませるなど、行動パターンもかなり変化しました。

 

そして、少しでも思い通りにならないと癇癪かんしゃくをおこし、度々家族を困らせていました。

 

・ひどい焦燥感

その時の感覚を端的に言うと、「今すぐしないと、どうにかなりそう」という強い焦燥感でした。

 

まるで、ナイフを持った人に後ろから追い立てられているような、そんな緊張感を常に感じていたのです。

 

調べてみると、低血糖時に大量分泌されるアドレナリンには「イライラ」「完璧主義」を引き起こす作用があるそうです*2。これはまさに、自分の体験した状態にぴったり当てはまります。

 

治療している間、こういった情報は得られず、自分も家族も疲弊していました。もし知っていたら、違う結果になったかも知れません。

 

太ももの隙間をやけに気にする

・隙間がほしい

さらに、こんなこだわりもありました。

 

私は発症前、太ももの間がぴったりくっつくぐらい肉付きがよかったのですが、それがどうしても醜く感じられ、「太ももに隙間がないとダメ」と思うようになったのです。

 

始めは運動することで体を引き締めようとしました。

 

しかし、いくら続けても実らず、鏡の前で発狂しそうなくらい思い詰めていきました。

 

そして、拒食症となり痩せていくなか、毎日太ももを凝視し、広がっていく隙間に満足感安心感を感じるようになったのです。

 

・雑誌のモデルを見て

太ももに執着するようになった原因は、おそらく当時読んでいた雑誌のモデルへの憧れがあったのだと思います。

 

そこには、カモシカのような足の、非常にきゃしゃなモデルが出ていました。その子が着た服は全てかわいく見え、特に細身のパンツを履きこなす様子は私にとって衝撃的でした。

 

骨盤から伸びた、まるで棒のような2本の脚。

 

Lサイズのジーンズしか履けなかった私は、そんな体になれば全てが解決するような幻想に囚われたのだと思います。誰からも人格を肯定されない辛さから、抜け出せるような気さえしました。

 

・戻っていく体への拒絶感

しかし、極度の痩せによって太ももの隙間は手に入ったものの、食べられるようになると徐々に肉が付きはじめました。

 

辛かったのは、そうやって元に戻っていく体を見ることです。

 

もちろん、健康的な食生活に戻ることが大事なのは理解しています。それでも、今まで着られた服がもう入らないというのは、認めたくありませんでした

 

そして、その「痩せていた自分を失う怖さ」が、続く過食症への引き金になっていたのかも知れません。

 

・誤ったボディ・イメージ

メディアの「"痩せ"賛美」によって誤ったボディ・イメージ(自分の体に対する認識)がもたらされ、拒食症を招く、という話を聞いたことがあります*3

 

自分の経過を振り返ると、確かにそれが一つのきっかけになっていたと感じました。

 

ただ、私の場合、まず「誰からも人格を褒めてもらえない」「他の人と同じことができない」という辛さがあり、たまたま見ていた雑誌の中に安易な「痩せ」という解決策を見出してしまった、というルートです。

 

そういう意味では、メディアによる影響は直接的というよりかは、間接的なものかも知れません。

 

最後に

・追い詰められていた

こうやって振り返ってみると、当時の私の「こだわり」は変なものばかりだったと思います。

 

しかし、私自身は1日1日を真剣に生きており、こういった「こだわり」を取り上げられたらすぐにでも精神が崩壊しそうなくらい、追い詰められていました。

 

逆に、こういったおかしな行動が、私を支えていたようにも思います。

 

・周囲も疲弊する

が、一方で、そんな私と毎日付き合わねばならない家族は、疲弊しきっていました。

 

「あなたといると頭がおかしくなる」と言われ、目の前で泣き出されたりもしました。

 

私は、自分のせいで家族を振り回すことを、望んではいませんでした。きっと当事者の多くも、そうではないかと思います。ただ、周囲の方が大変な思いをするのは、自分の家族を振り返る限り、事実だと思います。

 

いまは摂食障害の家族会も全国にありますし、専門の病院もあるようです。

 

私自身はそういった場所へ行ったことがないので、軽々には言えませんが、追い詰められる前に、そういった機関を訪ねられるのも一案かと思います。

 

以上、拒食症時の「こだわり」まとめ、でした。

*1:なたね油は1gあたり9kcal、上白糖は4kcal、豚ばら肉(生)も4kcalです。一方、トマト(生)は100gあたり19kcalと非常に低カロリーなので、差は歴然です。「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より引用。

*2:クリニック・ハイジーアHP「低血糖症の症状」http://eat-hygeia.jp/contents/symptoms/18.html(2018/4/10閲覧)

*3:様々な研究について包括的に触れたサイトです。なんばながたメンタルクリニックHP「メディアからの影響は本当なのか」http://nanba-nagata.com/medical/eatingdisorders/frommedia/(2018/4/16閲覧)