こんにちは。
残業を撲滅し、「定時で帰る」を実現するためのシリーズ。
前回は、定時退社のファーストステップとして「仕事の優先順位付け」を行いました。
いったん手元にある仕事をすべてリストアップし、それを「緊急度」と「重要度」で仕分けする方法でしたね。
では、今回は次のステップとして、仕事を細かい「タスク」に分ける方法について書いてみたいと思います。
<残業対策の全ステップ>
1)スケジュール作成のコツ
- 全ての仕事に「優先順位」をつける
- 仕事を「タスク」に分解する◀今日はココ
- タスクに「目標処理時間」を設定する
- タスクに時間配分する
- タスクの処理時間を測定
- 予定超過したら原因を考え、対策を取る
- 今後やる仕事も予定に組み込む
- 自分だけの予定表を活用
2)隙間時間を活用
3)3分考えて答えが出ないことは、「すぐ」誰かに相談
※この記事では便宜上「仕事」と「タスク」を下記のように使い分けます。
- 仕事 :一つの案件全体のこと
- タスク:その仕事を構成する、複数の小さな「仕事」のこと。「ステップ」も同義。
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仕事を「タスク」に分解する
■「タスクに分ける」とは?
「仕事を"分解"って、どういうこと?」
きっとそう思われる方も多いでしょう。
大抵の人は仕事を「一連の流れ」と捉えているため、「分ける」という表現がなじみにくいのです。
そこで、分かりやすくするために、「料理」にたとえてみましょう。
例えば「ちゃんこ鍋」を作る場合、たった1ステップで完成するわけではありませんよね。
こんな具合に、いくつものステップを踏んで、ようやく美味しいお鍋ができるはずです:
- レシピを調べる
- 材料を購入する
- 具材をカットする
- 肉団子を作る
- スープを作る
- 具材を入れて煮込む
「仕事をタスクに分解する」とは、ちょうどこんな風に「仕事」という大きなまとまりをいくつもの小さな「ステップ=タスク」に分けていくということなのです。
そして、この作業にとても役に立つのが、次に紹介する「ベイビー・ステップ」という考え方です。
■「ベイビー・ステップ」を使おう
・考え方
「ベイビー・ステップ」——きっと耳慣れない方もいらっしゃるでしょう。
これは、一つの仕事を最小限の単位に分割し、取り組みやすい形に変えることです。「赤ちゃんのように、小さな一歩を積み重ねる」という意味で使われます。
たとえば大きなプロジェクトや長期出張の場合、やることが多すぎて、何から手を付けていいか分かりません。
しかし、どんなに複雑で巨大な案件も、実はたくさんの「タスク」が集まったもの。
これらを一つ一つこなしていけば、最終的には仕事を完遂できるようになります。
これが、「ベイビー・ステップ」の考え方であり、目的なのです。
・分け方のコツ
(考えられる限り、小さなステップで)
では、実際にベイビー・ステップを使って仕事の細分化をしてみましょう。
ここでまず大事なのは、「考えられる限り、小さな単位に分解する」ということです。
いくらベイビー・ステップを意識しても、一つの単位が大きければ、結局その中でいくつものタスクを同時並行することになってしまいます。
こうなると仕事が消化しづらくなるため、細分化の意味がありません。
(日にちを跨いでもいい)
また、もう一つ重要なのは、「1日で仕事を終わらせようと思わないこと」です。
なぜなら、大きな仕事になるほど、タスクが多すぎて到底1日や2日では終わらないからです。
そのため、多くの場合、タスクは何日かに割り振る必要が出てきます。
これは決して「悪いこと」ではなく、他の仕事と兼ね合いながら進めるうえで必然的なことなのです。
・具体例
さて、上記のことを考慮したうえで、実際にタスクへの分解をやってみましょう。
ここでは、前回のエントリーで紹介した「緊急かつ重要」な仕事から「出張準備」を例にとってみます。
出張準備について、上司からこんな指示を出されたとしましょう。
【指示】
「1週間後に福岡から東京に出張してアメリカ人の重要顧客とミーティングし、そのあと夜景の綺麗なホテルでディナーせよ」
期限が「一週間後」と迫っているうえに、内容も盛りだくさんですよね。
これをどう細分化すればいいのでしょうか?
考えられる限り小さなタスクに分けると、このようになります:
- ホテルのブッキング
(1週間後にチェックイン) - ミーティングの場所・時間を調整
(顧客と相談) - 顧客の宿泊先を確認
- 飛行機の手配
(ミーティングの時間が決まってから) - 顧客の食べ物の好みをチェック
- ディナーの予算設定
(社内規定or上司に確認) - 「夜景の綺麗なホテル」をリストアップ
- 出張申請書の作成、提出
- ミーティング用資料の作成
- 待ち合わせ場所・時間確認
- 顧客の予定に変更がないか、最終確認
いかがでしょう?
いかにもややこしそうな上司の指示が、11個のタスクに分解できました。
一つずつ見ていくと、何となくこなしていけそうな気がしませんか?
これが、ベイビー・ステップのいいところなのです。
■タスク抽出のコツ
・4ステップ
しかし、そもそもどうやって「仕事」を「タスク」に分けたらいいの?という方もいらっしゃるでしょう。
そんな方のために、タスク抽出のコツをご紹介します。
- まず、仕事内容を「文章化」する
- その文章を「文節」単位に区切る
- それをギリギリ意味が分かる「まとまり」に再編する
- その「まとまり」に対応するタスクを列挙する
ざっくり言うと、「耳で聞いた内容や、頭の中に雑然と散らかっている"やるべきこと"をいったん文章として可視化し、それから純粋な"タスク"を取り出す」ということです。
・可視化が必要な理由
なぜ可視化が必要かと言うと、たいていの指示は 口頭で行われることが多いからです。そうすると、聞いたことを忘れたり、理解が追い付かず混乱する場合も出てきます。
また、メールの場合でも、必ずしも指示が簡潔に書かれているとは限りません。
このため、一度は指示事項を自分なりの言葉に変換することが大事なのです。
1.文章化
・上司からの指示
では、前回も取り上げた「急な東京出張」の話をベースに説明したいと思います。
あなたがいつも通りデスクに向かっていると、上司からこのように声を掛けられました:
・上司:「ちょっと来てくれる?」
・あなた:「はい」
・上司:「アメリカの○○社の営業部長が、来週東京の△△展示会に来るらしいんだよ」
・あなた:「そうなんですか」
・上司:「それで、またとない機会だから、今後の販売戦略についてミーティングしたいと思っている」
・あなた:「はい」
・上司:「ところが、担当者の□□君が来週いっぱい海外出張で、どうしても東京に行けない。そこで、君にその件の対応を頼みたいのだが」
・あなた:「…分かりました」
・ 上司:「あと、折角だから、夜はディナーの接待をしてほしい。できればそこそこ良いホテルがいいな。夜景の綺麗なフロアのレストランで」
・あなた:「承知しました」
・上司:「急で申し訳ないが、頼むよ」
なかなかの無茶ぶりですね。でも、こういった急な指令は、営業職ではよくあるものです。
では、ここからどのようにタスク化していけばよいのでしょうか?
・文章化してみる
まず、上司の発言から重要なキーワード(「来週」、「東京」、顧客名など)を拾って、その指示を文章化してみます。
すると、こうなります:
「1週間後に福岡から東京に出張してアメリカ人の重要顧客とミーティングし、そのあと夜景の綺麗なホテルでディナーせよ」
2.「文節」に区切る
次に、この文章を「文節」に区切ります。
文節とは、「日本語として意味の分かる最小限の単位」のことです。その文節の末尾に「ね」を付けて不自然でなければ、その区切り方で正解です。
「1週間後に/福岡から/東京に/出張して/アメリカ人の/重要顧客と/ミーティングし、/そのあと/夜景の/綺麗な/ホテルで/ディナーせよ」
(念のため、「ね」を付けて確認してみると、「1週間後にね、福岡からね…」となります。ちゃんと文節に区切れたことが分かります。)
3.文節→「まとまり」へ
そして、これらの文節を意味の分かる「まとまり」に統合します。
すると、こんな風になります:
- 「1週間後に/福岡から/東京に/出張して」
- 「アメリカ人の/重要顧客と/ミーティングし」
- 「そのあと/夜景の/綺麗な/ホテルで」
- 「ディナーせよ」
4.タスクを設定
最後に、これらの「まとまり」に対して、一体どういう行動が必要かを考えます。この、「必要な行動」こそが「タスク」となるのです。
今回の場合、こうなります:
- 「1週間後に/福岡から/東京に/出張して」
→(出張するには何が必要か?)ホテルブッキング、飛行機手配、出張申請書提出 - 「アメリカ人の/重要顧客と/ミーティングし」
→(ミーティングには何が必要か?)ミーティング場所・時間調整、資料準備、顧客の宿泊先確認、待ち合わせ場所・時間確認 - 「そのあと/夜景の/綺麗な/ホテルで」
→ホテルをリストアップ - 「ディナーせよ」
→予算設定、顧客の好みチェック
いかがでしょうか?
一見面倒に見えますが、仕事のダンドリが苦手な方は、試してみてもいいと思います。
仕事を可視化するだけでも冷静になれますよ。
■ベイビー・ステップの効果
では、そもそもなぜ、ベイビー・ステップを使うと仕事が進めやすくなるのでしょうか?
これには、2つの理由があります。
まず一つ目は、「仕事の全容を俯瞰できるため、最優先のタスクを把握できる」という点です。
・優先タスクを把握できる
冒頭の上司の発言だけだと、よほどの人でないかぎり、何をすべきかピンと来ないはずです。むしろ、
- ミーティングの場所はどうしよう?
- どんな料理がいいの?
- 夜景がキレイなホテルってどこ?
- ミーティングの準備、大変だなぁ…
などなど、一度にたくさんのことを考えてしまい、パニックになってしまうでしょう。
しかし、こういった仕事も、「タスク」に分解することで「何が一番緊急で重要か」がおのずと見えてきます。ぐちゃぐちゃに絡まった毛糸玉が、ほぐれて一本の糸に戻るような感覚です。
これにより、タスクの山から「最優先事項」をひっぱり出し、期限内に処理することができるのです。
・「仕事から逃げたい」を予防
さらにもう一つ、心理面の効果が挙げられます。
それは、「ややこしそうだから、一旦置いておこう」という「回避」を防げる点です。
人間というものは、難しそうな問題はつい先延ばししたくなるもの。
「出張準備、面倒くさいな…
あ、それよりクレーム処理やらなきゃ!こっちのほうが大事!」
などともっともな言い訳をした経験は、誰でも一度や二度あるのではないでしょうか?
しかし、タスク分解を行うと、一つ一つは意外と簡単だったりします。すると、気持ちが楽になり、それに向き合う気になれるのです。
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いかがだったでしょうか?
「とんでもない重荷」に思える仕事でも、こうやってタスクに分ければ1個ずつ取り組めそうですよね。
どんな時も、気負わず、焦らず。上司から難しい注文を受けた時は、ぜひベイビー・ステップを思い出して下さいね!
次回は、細分化したタスクをサクサクこなすための「目標処理時間の設定」についてお話します。
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