今回はフラッシュバックについてです。
急に嫌な出来事を思い出し、あまりの鮮烈さに苦しむこの症状。
そこから逃れるための対策法と、私の実体験をご紹介します。
過集中特性をいかした対策法
■フラッシュバックとは?
フラッシュバックは、このような症状のことです。
強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合に、後になってその記憶が、突然かつ非常に鮮明に思い出されたり、同様に夢に見たりする現象。 心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害の特徴的な症状のうちの1つである。*1
また、当事者向けの本にはこのように書かれています。
アスペルガー症候群の人は、つらい、苦しい過去の経験を非常によく記憶している傾向があります。そして、それをときどき鮮やかに思い出し、以前と同じように感情が沸き起こり、心が激しく揺すぶられてしまうのです。(中略)もう何年も前のことなのに、記憶はいつまでも色あせることなく、ふいに襲いかかり、苦しめられてしまいます。*2

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ここにあるとおり、フラッシュバックは
- 「苦しい過去の経験」を
- 「非常に鮮明に思い出す」
この2点が大きなポイントです。
まるで過去にタイムスリップしたかのように、その出来事を「再体験する」と言ってもいいでしょう。当事者にとっては、日常生活に支障をきたす非常にやっかいな症状です。
■対策方法
では、どうしたらフラッシュバックを回避できるのでしょうか?私の取った方法はこちらです。
- フラッシュバックの予感がしたら、まず身近にある「ごく小さなもの」を探す(例:壁のシミ、蛇口についた水滴 等)
- それを5秒間凝視する
- より細部に目をこらし、さらに5秒待つ(Google Earthでズームインしていくイメージ)
■解説
これは「過集中」という特性を活かした対策法です。
過集中とは、何かに対して極端に意識を集中してしまうこと。
なぜこれが使えるかというと、嫌な記憶への集中力を他のものに振り向けることができるからです。
例えば壁のシミの場合、壁という平面のごく小さな部分を見る。そして、さらにその細部をさぐる。丸く広がったシミの濃淡を見つめ、その形から色々なものを連想します。
すると、意識は徐々にそこへシフトし、ツラい思い出がスーッとかすんでいくのです。
毎回これを繰り返すことで、フラッシュバックを避けることができるようになります。
■私の実体験
では、この対策にたどり着いた経緯も書いておきます。
・高校時代に発症
私が初めてフラッシュバックに襲われたのは、高校時代のことでした。
まだ発達障害の自覚はありませんでしたが、人と上手くコミュニケーションが取れないこと、自分をコントロールできないことを歯がゆく感じていました。
そんな中、ある時からフラッシュバックが起こるようになったのです。
楽しいことを考えて、振り払おうとしたこともあります。しかし、どんなに良い思い出も、芋づる式に嫌な思い出をたぐりよせるもの。もがいてもなかなか収まりません。
そして、大学に入る頃には一日に何度も症状が出るようになりました。
・発生のタイミング
私の場合、発生するのは「一人になった時」ばかりでした。
- お風呂
- トイレ
- 誰もいない部屋 等
誰かと一緒にいるときは、ほとんど起きたことがありません。
一人だと意識がおのずと自分自身に向かうため、嫌な記憶も掘り起こされやすいのではないかと思います。
特に入浴中は、ほとんど毎回症状が出ました。
・フラッシュバック時の状態
実際にフラッシュバックが起こると、こういった経過を辿りました。
- 恥をかいたり、傷つけられた記憶が突然脳内再生される
- 頭の中が羞恥心・怒り・恐怖でいっぱいになる
- 声を出したり体を叩いたりして気を紛らわせようとする
- 徐々に症状は収まるが、やがてまた別の嫌な記憶が蘇る
- 1.~4.の繰り返し
・一番困るところ
このように、いつ発生するか分からず、しかも収まりづらいのがフラッシュバックの困ったところ。
例えば、もしTVを見ていて苦手な番組が始まったら、チャンネルを変えればいい話。簡単に逃れられます。番組表を予めチェックしていれば、そもそも目にする必要もありません。
ところが、フラッシュバックの場合はそうはいかないのです。
記憶は常に脳内にあるため、きっかけさえあればいつでも現れてしまう。そして物理的に逃げることもできない。だから対処がしづらいのです。
・自分でも気付きにくい
ここまで私の症状を書いてきましたが、実は精神科で相談したことは一度もありません。何故なら、これがフラッシュバックだと気付かなかったからです。
上掲の司馬さんの本を読み、初めてそれと知りました。
日常であまりに頻繁に起きることは、慣れすぎて異変だと気付きにくいのかも知れません。もし似たような症状の方がいらっしゃれば、医師への相談をオススメします。