発達障害傾向ですが、「営業」できました。

発達障害の傾向がある元・営業が、「人並み」に働くための仕事ハックと「生きづらさ」に向き合う日々を書いています。

「他人に共感できない」という欠陥~エピソードと本人の視点~

人に共感できない 思いやり 自己中心的

「思いやりのない人」も、実は悩んでいるのです…

人から「思いやりがない」「自分勝手」と言われたことはありませんか?

自分は真摯に接しているつもりなのに、伝わらないのはツライですよね。

今回は、「共感性の欠如」のせいで同じ経験をした私のエピソードです。

他人に共感できない

■共感性の欠如とは?

共感性の欠如。

これは「過集中」に加えて、発達障害に特徴的な症状と言われています。

具体的には、

  • 相手の気持ちを考えず、思ったことをすぐに口にしてしまう
  • 相手の話をさえぎって喋るため、会話が成立しない
  • 自分が話したいことを、相手の興味の有無にかかわらず一方的に話し続ける

などが挙げられます。

私もこういったことが原因で、今まで何度も人間関係のトラブルを起こしてきました。特にショックだったものを、いくつかご紹介したいと思います。

 

■幼少時代

・保育園で

(帰り際に)

一番古い記憶は、保育園の年中組だったある日のこと。

母が私を迎えに来て、いつものように園を出ようとした時のことです。 仲の良かった女の子が、遠くから私に手を振ってくれました。

最初は嬉しかったので、私も手を振り返しました。 

しかし、私が遠ざかってもずっと手を振っているその子。私はだんだん面倒くさくなり、ぽつんとこう言いました。

「しつこい女だなぁ」

 

(母に叱られた)

それを聞いた母は、慌てて私を叱りました。

「なんてこと言うの!」

私は「ああ、こういうことは言ってはいけないんだ」と即座に理解できました。 

しかし、指摘されたら理解はできるものの、この「思ったことをつい口にしてしまう」という癖は、時が経ってもなかなか治りませんでした。

 

・小学校で

(校庭での出来事)

次によく覚えているのは、小学校1、2年の時のことです。休み時間に、私は校庭で同級生と遊んでいました。

すると始業のチャイムが鳴ったので、慌てて教室に戻ろうとしました。しかし、何かにつまづいて、私はベタっとコケてしまったのです。

痛いうえに、人に見られた恥ずかしさもあって、私はなかなか立ち上がれませんでした。

すると、彼らの一人が「大丈夫?」と声を掛けてくれました。

 

(友達を拒絶)

普通なら、「ありがとう、大丈夫だよ」と返すべきところ。

しかし、私は「うるさい!!」と言い放ってしまったのです。 

彼女の表情は、一瞬にして曇りました。そして何も言わず、きびすを返し去っていったのです。

「まずいことを言ってしまった」と、私はその後ろ姿に悲しくなりました。でも、もう取り返しはつきません。その子との関係は、その後もずっと気まずいままでした。

 

■学生時代

・大学の同級生から絶交される

(二十歳を過ぎても治らず)

思ったことをすぐ口に出し、そして相手から拒絶される。

こんなことが、小学校以降も度々ありました。その度に私は「またやってしまった」と罪悪感に駆られましたが、二十歳を過ぎてもそのクセは治りませんでした。

そして、大学生の時にもショックな出来事がありました。

仲の良かった友人に絶交されてしまったのです。

 

(仲の良い友人と)

それは、4回生の秋のことでした。

殆どの同級生が就職を決め、あとは単位を満たすばかりとなった時期。親からさんざん就職をせっつかれたものの、どうしても研究がしたくて大学院の受験を決意した頃でした。

そんな折、1回生の時から仲の良かった友人とばったり会い、キャンパス内のカフェでお茶を飲むことになったのです。

 

(何気ない一言)

その子は天真爛漫な雰囲気で、何となく「話しやすいなぁ」と思っていました。それが気の緩みにつながったのかも知れません。

彼女は嬉しそうにこう言いました。

「とうとう就職が決まったの!憧れの○○業界で働ける」

そこはとても厳しい世界で、彼女のようなあどけなさのある人には不向きに思えました。それで、つい口を滑らせてしまったのです。

「へぇ、あなたみたいな人でも就職できるんだね」

彼女はニコニコして、その後も変わらない様子で接してくれました。

 

(絶交)

しかしその日の夜、彼女から届いたメールはショッキングな内容でした。

そこには「もう絶交したい」と書いてあったのです。

 理由は、「相手のことを配慮できない人間とは、付き合いたくないから」。 

その日、私が言った「あなたみたいな人でも…」という言葉が原因でした。私は自分を責め、声を上げて泣きました。

  

・母の努力を否定する

(20代中盤のこと)

これだけ痛い失敗を繰り返しても、私は自分の言動をコントロールする術を身に着けることができませんでした。

「自分はどこかおかしい」と自覚してはいましたが、当時は「発達障害」という言葉が殆ど知られていなかった時代です。

睡眠障害や抑うつなどで度々精神科を受診してはいたものの、医師からは薬を出されるだけで、知能検査の提案など一度もありませんでした。

「あなたは自己分析できる賢い人だから、どこも異常なんてないよ」

と笑う医師さえいました。

そして、劣等感を抱えたまま20代も中盤に差し掛かった頃、今度は肉親を深く傷つける事態となってしまいました。

 

(母の努力)

ある年の正月、私は実家に帰省していました。

遠く離れた場所でしたが、お盆と正月には必ず帰ることにしていたのです。

その頃、私の祖父母が体調を崩し、母はその看病につきっきりでした。彼女はフルタイムの仕事を抱えながら、昼休みも犠牲にし、毎日疲労困憊だったろうと思います。

ただ、人の心情を察せない私には、それがどんな思いなのか理解することができませんでした。

 

(ミスを指摘)

そして、ある日の食卓。彼女がごく些細なミスをしてしまい、私はそれを家族全員の前で指摘しました。

すると、彼女が急に立ち上がり、私の腕を掴んで隣の部屋に入りました。私を睨み付けた彼女は、目にいっぱい涙を溜めていました。

 

(母の涙)

「なんで、そんなこと言うの?私がどれだけ頑張っているか、あなた分かってるの?」

それを聞いて、私はハッとしました。そして、ようやく理解しました。

母は趣味も何もかも捨て、ただひたすら家族の世話と祖父母の介護に全精力を傾けていました。それは「献身」そのものだったはずです。

しかし、その重荷が、彼女の精神を徐々に追い込んでいました。そして、私が彼女の非を咎めたことで、ダムのように貯まった苦しみが一気に溢れ出てしまったのです。

 

(後悔)

本来なら、彼女の大変さをおもんばかり、「ちょっとしたことは見逃そう」と考えるべきだったのでしょう。世渡り上手な方なら、それが自然にできたはずです。

しかし私には、その能力が欠如していました。それがために、彼女を泣かせるハメになってしまったのです。

母には申し訳ないことをしてしまったと、今でも後悔しています。

(なお、彼女は自分の仕事を全うしつつ介護を務め上げ、祖父母を看取りました。私には到底マネできません。)

 

■「共感性の欠如」という現象

・本人の視点

ここまで書いてきたトラブルは、いずれも「他人への共感・配慮ができない」ために起こったものばかりです。

しかし、よく考えてみると、そこには相手や第三者の視点からは見えない「本人の視点」があることに気付きます。

つまり、「本人がどう感じ、どう行動したか」ということと、「相手や第三者がそれをどう受け取ったか」との間には一定の乖離があるということです。

そこで、自分なりに「共感性の欠如」を考察してみました。

 

・学習により、心情の理解は可能

各エピソードでは、私の言動が「一方的で自己中心的」と思われた結果、「思いやりのない人」「性格の悪い人」という捉え方をされてしまいました。

ただ、自分の側からこれを見つめ直すと、下記のような行動パターンが浮かび上がります。 

  • 相手が何を考えているか、想像するスキルがない*1
  • そのため、何の躊躇いもなく不適切な言動をしてしまう
  • しかし、他人から指摘されたら問題点を理解し、反省できる

つまり、指摘されれば相手の心情を汲むことが可能だということ。これは、言い換えれば「全人生を通じて共感性がない」のではなく、「共感性は先天的には欠けているものの、学習によりある程度獲得することは可能」だということです。

この2つの事柄は、似ているようで少し違いますよね。本人の努力次第で、他人への理解を深める余地があるのですから。

 

・共感性の充実を目指して

こういった自分の「認知の仕方」に気付いてからは、さまざまな立場の人達の考え方、ものの捉え方、感情の動き方を知ろうと努力するようになりました。

より共感性を充実させられるよう、色々な方と出会いたいと思っています。

 

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*1:このことを「人に心があること自体知らなかった」と表現した人がいますが、私も全くそれに当てはまります。例えば、仮に一回り年上の人が自分の仕事のサポート役だったとします。その方に何かを頼むにも、定型発達なら「相手は目上だから、下手に出ながらお願いよう」と思うところですが、私は「人間は全て、その立場に即した行動を、感情を排して行うことができる。だから、仮に相手が目上でも、特別な配慮をする必要はないし、相手も年下の私から何をどんな方法で頼まれても決して怒るはずがない」と考えてしまうのです。