4月は新人研修でいそがしい季節。指導方法に悩む人も多いことでしょう。
そこで今回は、「教える立場として気を付けたいこと」をまとめてみました。
OJTを「教える側」の心得
■手を抜けない理由
「来週から○○さんのOJTをやってくれない?」
上司にこう言われ、内心「面倒だから適当に済まそう」と思ってしまう。忙しい会社員なら、自然なことです。
でも本当に「適当」にしてしまうと、後で自分に返ってくるのが怖いところ。
なぜなら、相手はいずれあなたをサポートしてくれるからです。最初にしっかり仕事を覚えてもらわないと、結局自分が困ってしまう。だからこそ、新人研修は手を抜けないのです。
■9ヶ条
では、一体どんなことに気を付けて指導すればいいのでしょうか?注意点を9か条にまとめました。
- エリアごとの重要客リストを渡す
- クレームの怖さを伝える
- 最初に「ゴール」と「ルート」を教える
- 社内のキーマン情報を教える
- 頻繁に声掛けをする
- 定時退社を徹底させる
- 定時退社できないなら、理由を一緒に考える
- 「え、知らないの?」「いま忙しいから」は絶対言わない
- とにかく笑顔で!
では、詳しく見ていきましょう。
1.エリアごとの重要客リストを渡す
まず、新人には顧客のことを知ってもらう必要があります。
何の予備知識もない人間にとっては、どんな大口顧客も「ただの社名」。そのため、個別の客にどんな対応をしたらいいのか、想像すらつきません。
例えば、部署の売上の1/3を占める客なのに、ぞんざいな対応をしてしまうケースだってありえます。
こういったミスを防ぐため、下記のような表で各顧客の特徴を覚えてもらうようにしましょう。
- 各エリアごとの重要顧客名
- 自社売上に対する貢献度(%)
- 購買傾向(商品・量)
- 購買の季節変動*1
- 顧客の顧客(BtoBの場合)
2.クレームの怖さを伝える
また、「クレーム」の怖さについても伝えておく必要があります。なぜなら、ほとんどの新卒はクレーム対応の重要性を知らないからです。
バイト経験ぐらいはあるでしょうが、売上の責任を負うような仕事はしない人が大多数。何も教えなければ、深刻な案件でも放置しかねません。
したがって、新人には「クレームがどんなに重大で、迅速な対応を要するものか」を必ず伝えるようにしましょう。
3.最初に「ゴール」と「ルート」を教える
また、事務仕事を指導する際には、そのタスクの「最終ゴール」と「それに至るルート」を教えることも大切です。
なぜなら、新人の中にはタスク同士の関連や仕事全体の流れを把握しづらいタイプもいるからです(下記:関連記事)。
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そのため、指導に取り掛かる前に、あらかじめ次の3点を伝えるといいでしょう。
- そのタスクを構成要素とする「仕事」の全体像
(例:タスク=受注入力、全体=注文処理) - 仕事を構成するステップ一覧
- その仕事の最終成果
(例:注文処理が終わると、顧客に商品が出荷できる)
4.社内のキーマン情報を教える
さらに、「社内のキーマン」について伝えておくのも大切です。
こういったことはいずれ分かるものですが、最初は知らなくて当然。なぜなら、本当の実力者は決して組織図には載らないからです。
このことを理解していないと、相手を間違えて無駄足を踏むことに。決して効率的とは言えませんよね。
これを防ぐため、下記のことも伝えるようにしましょう。
- 各案件のキーマンの名前
(修理案件→○○部のAさん など) - キーマンの行動パターン
(相談するのは△曜日がいい など) - 相手への連絡方法
(○○部長にはメールより電話連絡がベター など)
5.頻繁に声掛けをする
次に、新人には頻繁に声を掛けるようにしましょう。これは些末なことに思えますが、実はとても大事です。
なぜなら、彼らは先輩・上司に対して「HELP」サインを出しにくいから。目上の人が忙しそうにしていると、「この程度の質問していいのか」と遠慮してしまうのです。
それに、教える側としては忙しさにかまけて放置しがち。そのため、下記のような配慮をするようにしましょう。
- 作業が想定より長引いていたら、
「大丈夫?分からないことある?」と聞いてみる - 相手が「キョロキョロ」「ソワソワ」していたら、
「どうしたの?大丈夫?」と声を掛ける
なお、こうやって頻繁にコミュニケーションを取ると、信頼関係の構築にも役立ちます。
6.定時退社を徹底させる
(定時退社への罪悪感)
そして、忘れがちなことですが、新人には定時退社を徹底させましょう。
これには2つ理由があるのですが、一つは新人が「定時で帰るのは悪いこと」と思いがちだからです。
誰だって、先輩たちが残業するなか「お先に失礼します」とは言いづらいもの。
だからこそ、あなたから先回りして伝える必要があるのです。
(体調悪化で仕事に支障も)
また、残業で体調を崩すと仕事に支障が出るのも大きな理由。
下記記事でも説明しましたが、残業は体調悪化の原因です。ただでさえ新人は慣れない環境でストレスを抱えているため、少しの残業でも深刻な事態に繋がりかねません。
したがって、必ず定時で帰るよう口酸っぱく伝えましょう。
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7.定時退社できないなら、理由を一緒に考える
それでも、新人の仕事がなかなか終わらず、残業せざるを得ない場合だってあるでしょう。
もしこんな状態が続くようであれば、「なぜ定時で帰れないか」を一緒に考え、対策を取るのも先輩の役目です。
なぜなら、新人の場合、残業の原因を自分自身で把握できないことが多いから。
ケアレスミスが多かったり、時間配分が上手くいっていない可能性がありますが、これを特定するにはどうしても客観的な視点が必要です。
そのため、相手の仕事状況を洗いざらいヒアリングし、改善に向けて一緒に考える必要があるのです。
8.「え、知らないの?」「いま忙しいから」は絶対言わない
また、新人を指導する際は、ちょっとした言葉遣いにも気を付けましょう。
特に、
- 「え、こんなことも知らないの?」
- 「いま忙しいから、後にしてくれる?」
この2つは絶対に言わないことです。
なぜなら、こういった言葉は「この人に頼ってはいけない」という意識を相手に植え付けてしまうから。
新人はただでさえ先輩に気を遣いがちなのに、それ以上萎縮させてはいけません。意識して言わない習慣を作りましょう。
9.とにかく笑顔で!
そして、とにかく笑顔で接すること!これは必須です。
忙しいとつい眉間に皺が寄りますが、これは「イライラ」「近付くな」のサイン。とても気軽に質問できる雰囲気ではありません。
もちろん、笑顔をキープするのは大変なこと。しかし、笑顔には人との距離を縮め、コミュニケーションを円滑にする効果だってあるのです。OJT中だけでなく、その後の先輩・後輩関係にもプラスになることばかり。したがって、多少しんどくても笑顔は忘れないようにしましょう。
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いかがだったでしょうか?
新人の指導は、先輩にとってかなり負担の大きいもの。しかし、うまくいけば相手も自分も成長できる、そんなまたとないチャンスでもあります。
皆さんの指導が、成功することを祈ります!
*1:例えば、中国・華僑圏なら2月あたりの「旧正月」、インドなら10月あたりの「ディワリ」などは、取引が停滞しがちです。他にも、それぞれの国・文化圏で、日本ではなじみのない習慣が広く存在します。フィリピンに至っては、10月中旬からすでにクリスマスモード。仕事の成果はほとんど期待できません。